ドラッカーは「日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。」とは言わない

投稿日:

戸田信子の酷い発言

酷い発言を見ました1

日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。/ドラッカー

強烈な言葉。 時間の使い方をフリーランスになってからよくやく気づいた。会社にいるときよりも仕事の効率は上がり収入も増えて働いている時間は減った。自分の大切な人達や大好きな趣味や仕事に優先的に時間を使う事が大事。

— 戸田 信子 (@nobuko_toda) 2017年9月21日

まるでドラッカーが 「日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。」 と言ったような書き方です。

このツイートのソースはおそらくこれです。

ドラッカー「時間の収支表は常に大赤字である」日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。 | リーディング&カンパニー株式会社

このタイトルもドラッカーの発言がカギ括弧で括られているので、 「日本人は〜」がドラッカーの発言ではないと判断できますが、 非常に紛らわしい書き方です。

「日本人は人の財布は盗まないが、人の時間は平気で盗む。」は 元ネタあるかと思ってしらべてみたのですが、 「ザビエルの見た日本 講談社学術文庫」に似たようなことが書いてるらしい という検索結果が出ましたが、その本は確認していません2。 まあザビエルが生きていたのは400年以上前だし、本題から外れるので。

ドラッカーがこんな発言をしないと断言できる理由

「日本人は〜」がドラッカーの発言でないと判断した理由は、 ドラッカーの著書「産業人の未来」において、 全体主義の国民性による説明を批判していたからです。

第1章「産業社会の行方」のp10〜11に以下のように書かれています。

国民性あるいは民族性なるものが存在することは確かである。 しかし、それは主として物事の進め方に関わる特性である。 すなわち、緩慢にか急激にか、慎重にか性急にか、 感情によってか理性によってか、丁寧に行うかさっと行うかである。

(中略)

ファシズム全体主義を国民性によるものとして理解することは、 ヒトラーの主張を認めるに等しい。 必然かつ不変の国民性という概念と、 恒久的かつ不変の人種的特性という概念の間には、ほとんど差がない。

国民性による説明を批判していたドラッカーがこういう発言をするとは思えません。

正しく引用をしていない元ソース

なお、ツイートのソースにかかれている「時間の収支表は常に大赤字である」も 原文とは異なっています。 「経営者の条件」の第5章「最も重要なことに集中せよ」の冒頭に 以下のように書かれています(太字引用者)。

時間を分析すれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間が あまりに少ないことがわかる。 いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は依然として自分の時間ではない。 時間の収支は常に赤字である。

「プロフェッショナルの条件」の 第4章「もっとも重要なことに集中せよ」にも同じ掲載されています(太字引用者)。

時間を分析すれば、真の貢献をもたらす仕事に割ける時間は あまりに少ないことがわかる。 いかに時間を管理しようとも、時間の半分以上は、依然として自分の時間ではない。 時間の収支は、常に赤字である。

原著「The Effective Executive」の「5: First Things First」には 以下のように書かれています。こちらを訳したとも思えませんね。

any analysis of executives' time discloses an embarrassing scarcity of time available for the work that really contributes.

著作者名詐称罪

著作者名を偽る行為は、俗に「著作者名詐称罪」と呼ばれる、犯罪行為です。

著作権法 第百二十一条

第百二十一条 著作者でない者の実名又は周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物(原著作物の著作者でない者の実名又は周知の変名を原著作物の著作者名として表示した二次的著作物の複製物を含む。)を頒布した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

著作権法 第百二十三条にあるとおり、この第百二十一条は非親告罪です3

第百二十三条 第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。


  1. 元ツイートは消えましたが、archive.isにあります[return]
  2. 外国人から見た日本と日本人、ザビエルが見た戦国時代の日本に記載があります。まあ、当時は外国人が珍しいし、全体的には好意的にかかれているようですが。 [return]
  3. 「前条第一項」は第百二十二条の二「秘密保持命令に違反した者」を指すようです。→文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)議事録・配付資料 [資料3]-文部科学省 [return]