ドラッカーの「選択と集中」は誤解されている

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正しい「選択と集中」

ふとこのツイートが目に留まりました。

このツイートで書かれている資生堂の件は「ニュース」なのでコメントしません。

ただ、「儲かっている事業から撤退して人員を他の生産性の高い分野に集中する」のは、 本来の「選択と集中」です。事業を売却して別の事業に資金を投入することではありません。

ドラッカーの定義する「選択と集中」

これは経営者の条件に記載されています(KindleではNo.1796あたり)

集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。 そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、 「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。 答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。 もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。 第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、 明日の機会に充てなければならない。

ポイントは2点です。

  • 「儲かっているかどうか」が基準ではなく、「新しく始める価値があるか」が基準
  • 目的は資金ではなく、人の強みを活かすため

新しく始める価値があるか

事業で言えば、新規参入する価値があるかどうかです。

この直後に以下のような記載があります。

完全な失敗を捨てることは難しくない。自然に消滅する。 ところが昨日の成功は非生産的となったあとも生き続ける。 もう一つそれよりもはるかに危険なものがある。 本来うまくいくべきでありながら、なぜか成果のあがらないまま続けている仕事である。

利益が出ているが、新規参入する価値がないものは「昨日の成功」です。

人の強みを活かす

これはドラッカーの著書全部に言えることですが、主役は常に人間です。 いくら利益が出ていても、過去のものにワクワクする人は少ないでしょう。 人がワクワクするための「明日の機会」に人を充てることは、 人道的観点からも重要です。

「過去のもの」を支える人も報う

しかし、どうしても過去をメンテナンスしないといけない人もいます。 ドラッカーはそういう人たちについても、報いなければいけないと書いています。

「明日を支配するもの」p105に以下のように記載されています。

しかしわれわれは、継続性についても報いるべきことを知らなければならない。 もっぱら継続的改善を行なう者に対しても、 同じように価値ある者として評価し、報いていく必要がある。

参考文献