うつ病は怖い。しかし治せることを教えてくれる『うつ病九段』
iPhoneで将棋の観戦をしていたときに(2018年7月18日 第77期順位戦B級2組 先崎学九段 - 中村太地王座)、ふとあるコメントが目にとまりました。
先崎は昨年の9月から今年の3月まで休場し、4月から復帰した。本局に勝てば、復帰後初白星となる。
先崎九段が休場していた理由が気になり、Googleで検索しました。
出てきた結果は・・・うつ病。
うつ病闘病記を出版していた
その対局は惜しくも負けてしまいました。 しかし、うつ病にかかった人とは思えない熱戦でした。 何があったのか、こんなに早く復帰できたのはなぜか気になってたところ、 闘病記が出版されているのを知り、購入しました。
この本を読んで、うつ病が怖い病気であること、 そして治る病気であることが理解できました。 うつ病が怖い病気なのは将棋が弱くなったためです。 うつ病が治る病気なのはまたプロの将棋が指せるようになったからです。
九段→アマ2級
うつ病になってどれくらい弱くなったのか。 それが次のエピソードです。なんと七手詰が解けませんでした。
一時間ほど休んで疲れが取れると、今度は七手詰の問題集を持ち出した。 前の本(引用者注: 九手詰〜十三手詰の詰将棋)より断然易しく、 七手詰なんて前ならば小学校の算数どころか息を吸うようにできたわけで、 要はがっくりした頭をこれによって元気づけようと思ったのだ。
なんと詰まなかった。そんな馬鹿なと思って何度もチャレンジしたが詰まない。 七手詰も形によってはすごく難しいのであるが、 しかし私が解こうとしたのは、アマチュア向けの本であり、 実に類型的な七手詰だった。
五手詰が解けるが七手詰が解けないのは、アマ2級くらいの棋力です。
「九段からアマ2級と言われてもピンとこない」人のために、 どれくらい離れているかを分かりやすく書いてみました。
- 九段(うつ病にかかる前)
- 八段
- 七段
- 六段
- 五段
- 四段(ここまでがプロ)
- 三段(ここからは奨励会=プロの卵)
- 二段
- 初段
- 1級
- 2級
- 3級
- 4級
- 5級
- 6級 = アマ四段
- アマ三段
- アマ二段
- アマ初段
- アマ1級
- アマ2級(うつ病にかかった後)
プロ棋士として復帰、そして勝利
将棋が弱くなった先崎九段ですが、 うつ病から回復し、8/26現在2勝を挙げています。
復帰後初勝利のときはリアルタイムで見ていました。感動しました。 いくらいい将棋が指せていても、勝利こそが最良の薬なので、 自分のことのように喜びました。
楽しく読める
闘病記にはつらいイメージがあります。 しかしこの本はユーモアも多く、楽しく読めます。 エロ動画やエロ記事を見るエピソードにはクスッとしました。
アレッと思ったら頭の奥から「エロ動画が観たい」とサインが送られてきた。 これも非常に懐かしい感覚だった。 届きたてのタブレットで慎重に音を消して観てみた。 下半身の生理的反応はなかったが、ちょっぴり満足感があった。
(中略)
圧倒的に読めたのはエロ記事だった。 (中略) その類の記事だけが、なぜかすこし読めるのだった。 エロ動画もそうだが、人間の本能とはオソロシイものである。
将棋ファンなら以下のエピソードが面白いと思います。 数十年前は「雁木(がんぎ)を指すと弱くなる」と言われた戦法なので 「何も知らないと思ってだましてるな」と疑っても当然です。
将棋の戦術にも大きな変化があるらしかった。 誰にだったか、盤上はどんな感じかと訊いたら、 「雁木という戦法がすごく流行っています」といわれた。 これは軽々に信じることはできなかった。雁木というのは 江戸時代に指されたが、近代の将棋界ではついぞ指されていなかった 戦法だったからである。
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