2015年10月18日日曜日

「内部統制」こそが不正を増やす

何か問題を起こした企業に対して、「内部統制が足りない」と言われることがあります。しかし、これは全く逆で、自分は内部統制をすればするほど不正は増えると断言します。したがって、SOX法は世紀の悪法で、少なくとも日本では早急に廃止すべきです。

その理由は、1つは日本IBMでの苦い経験があるからです。日本IBMでは2004年頃から内部統制が厳しくなりましたが、内部統制を進めれば進めるほど窮屈な会社になり、生産性は落ちました。どれくらいうんざりしているのかというと、内部統制の象徴である、Integrityという単語が嫌いになったほどです。

生産性はともかく内部統制によって不正は減ったのかというと、むしろ増加しています。Wikipediaにもありますが、2007年頃から事件が増えています。さすがに当時の社長が盗撮で捕まるとかあまりにできすぎて苦笑いするほどですが、内部統制をすればするほど不正が増える分かりやすい例です。

もちろんこれは1社の例ですが、これが起きる理由を説明します。これが次の図です。


一番左が、内部統制を行う前の状態です。そして、この円は通常の業務として行われている範囲、別の言い方をすると裁量を表しています。この通常の業務の中で、何か不正が行われたとします。

このときに、内部統制では、この円自体を小さくすることで不正が起こらない対処を行います。この結果が中の図です。ここでも不正が起きると、さらに内部統制を進め、右側の図になります。これを進めると、正当な業務はただの1点に収束します。すなわち、裁量が全くなく、すべてが機械的に行われるのが内部統制の究極の姿です

当然ながら、これは非効率以外の何物でもありません。特に日本では、現場の優秀さが競争力の源であり、内部統制をすることは、現場の力を削ぐのと同義です。だから、内部統制をすればするほど、会社の競争力が落ちます

さらに、内部統制は、もう一つの問題を引き起こします。それは、間接部門の権力増大です。

内部統制は必然的に、チェックする側、すなわち間接部門の権力を増大させます。間接部門はその名の通り、直接顧客と関わったり、直接製品に関わりません。すなわち、現場を知りません。その代わりに、みんなが共通に持っている負担を減らすことで、間接的に現場を手助けする役割です。協力関係であり、上下関係ではありません。

しかし、内部統制によって、間接部門が上に立ってしまいました。別の言い方をすると、現場の本音と、間接部門の建前が食い違うときには、間接部門の言い分が「正しい」ということになってしまいました。通常は本音と建前を一致させる必要はありませんが、内部統制は本質的に、この違いを許しません。

このような状態に立たされた時に、現場が取りうる方法は二つしかありません。「本音を捨てて建前を取る」「本音を取って建前を捨てる」のどちらかです。前者を取れば生産性を落とす窮屈な会社となり、後者を選べば、それはすなわち「不正」です。後者を選んでも結果的に問題がなければ見逃されることもありますが、問題があれば不正として厳しく追及されます。

よって、内部統制は生産性の低下を引き起こし、必然的に、不正を増加させます。百害あって一利なしの、根本的に間違っている方法です。

では、どうやったら不正をなくせるのでしょうか。その答えは「ない」です。人という曖昧な存在が関わる以上、不正をなくすことはできないし、かといって人を排除すると競争力を失います。まずその答えは「ない」と認識することが大切です。なので、内部統制という考え方はそもそも間違っています。

その上で、不正を減らすことは可能です。例えば横領を減らすなら、横領に対する厳罰化か、あるいは逆に、お金の相談を受けやすくする手が思いつきます。もちろん業務自体を見直し、規制で対処するしかない場合もありますが、不正をなくすことを最優先にするのではなく、現場の効率化とうまくバランスを取ることが必要です。

これを一般には「マネジメント」と言います。一方で、内部統制は"Internal Control"という単語が使われています。すなわち、別の言い方をすると、「コントロールでなくマネジメントをさせろ」というのが自分の答えです。